サヤマ・リマスタリング

「2005年の日本代表監督考」第2回



──歴代日本代表監督の雇用のありようからして外国人監督とは違っていましたね。

佐山(以下、S) そうですね、終身雇用制に守られたタテ社会の企業アマチュアだったが故に、代表監督のメンツと在任期間にこだわった。代表選手候補にプロないしはノンアマチュアがいるのに、自分だけ会社員ではおかしい。加茂周さんは日産のプロ監督で第1号。でも代表監督でプロ契約してくれと言ったのは森さんが最初です、認められなかったけど。横山謙三監督時代の1989年6月から'90年の7月にかけては、3つの引き分けをはさんで12連敗なんてことがありました。今の代表監督なら、3連敗しただけでもクビが危ない雰囲気ですものね。だから’92年就任のハンス・オフト監督以降とそれ以前とではかなり違う。と言って、非プロ代表監督の時代を陳腐なものとして片付ける考え方もかなりおかしい。歴史の絨緞じゅうたんの下に掃きこんじゃいけないと思うし、コットン・ゲームシャツ時代の秘話掘り起こしを是々非々的にやる人がもっといないと。最近、「経験値」というコトバがよく遣われるけど、悪かったこと、ダメだったことばかりみながよく知っている。反対に前述したメキシコ五輪銅メダルの繊細微妙な戦略的勝利はあまり語られない。それと、あと一歩でワールドカップ・メキシコ本大会という所まで行った「森・日本丸」の良さは何と言っても結束力とメディア対応の見事さでした。

──オフト、ファルカン、加茂、岡田、トルシエと、その後、フルタイムのプロ監督になつて行くのですが、代表監督が選ばれる過程とそれを追うマスコミの姿勢、ファンの反応などにどのような変化があったのでしょう。反対に、変わらない点は。

S ジーコの代表監督就任と協会会長選出とがセットになった時は、出来レースということもあってそれなりに分かりやすかった。逆に、10カ月以上も代表戦がなかったのが、'91年7月27日の日韓定期戦(●0-1〈前半0-0〉)から翌'92年5月31日のキリンカップ対アルゼンチン戦(●0-1〈前半0-0〉)のあいだ。横山監督からオフト監督に代わるときで、2度とあってはならないことです。
 
 トルシエの時も強烈に売り込まれてオタオタした感じでしたよね。それとやはり海外人脈の乏し過ぎる協会のアマ体質を批判をするなら、代案も出せという真っ当なルールが、10年がかりで完成しつつあるという印象かな。その代案も机上の空論ではなく現実的に受諾可能な範囲で出せというバイアスがかかるから、監督業経験の足りなさをプロ野球の監督のように有名性だけで押し切れた川淵=ジーコ体制は恵まれている。じっさい、'03年6月のコンフェデレーションズカップ以降、ジーコ・ジャパンは連敗を喫していないんですよね。解任要求運動が起きれば、擁護派もやり返すというあたりがトルシエの頃から始まった。変わらない点は、次の準備がいつもおろそかに見えることです。でも、後任探しが表沙汰になると不協和音が生じるから、やっていなくてもやっていたと後で言い訳が出来てしまう。中には、声なんか掛かっていないのに掛かってると親しい記者に書かせる海千山千の自称代表監督候補も居る(笑)。

──日本代表のフロント、つまり協会にとっての「責任」の所在についてはどうお考えですか。

S 気に入らないのは、某協会幹部のために名誉副会長職まで作ったことですかね。不祥事を起こした社員を社長室付や総務部付と称する一時預かりにして詰め腹切らせるみたいな話を連想してしまう。代表監督は日本人指導者を奮起させるために外国人監督を2度連続で起用しない、会長は最高経営責任者=CEOという呼称にして外国人にしよう、とかなり前から半分冗談で言ってて好評なんですけどね(笑)。このあたりの無限無責任体系は、財団法人(当時)であることの制約もからんで、いちばん見えづらい領域なんじゃないかな。ポスト川淵の話題がぼちぼち出て来ているけど、次の人は、誰がやっても物足りなく見えるでしょう。良きにつけ悪しきにつけ、我欲の強さであれこれ派手にやれる人はそう居ない訳だから。任命権者川淵三郎の人を見る目のなさや二面性を象徴する身内への矯激な言動うんぬん以前に、人材難の問題が常にあったんじゃないですか。俺が居なくなったら後を誰がやれるんだという彼のナルシスティックな心理状態も分からない訳じゃない。でも民主主義の別名は「恩知らずシステム」なんですよね。そのあたりが、戦略的思考にうとい戦術偏愛ライターの一番苦手なところ。これからは若い人でも堂々と協会の構造的欠陥や人事問題ぐらいは言えるようじゃないとね。(第3回につづく)
緊急発売 どうなるジーコジャパン!? (エンターブレインムック)
初出:『サカ通日本代表スペシャル』2005年5月/エンターブレイン
「歴史から学ぶ、日本代表監督名鑑。」を改題・補筆 聞き手:山城敬

※「サヤマ・リマスタリング」は毎週水曜日・金曜日に掲載予定です。