アンディ・ウォーホル(1928~1987)の27回目の命日に合わせて、展覧会『永遠の15分(15 MINUTES ETERNAL)』に行ってきた。 

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 着くや否やげんなりした。六本木ヒルズ・森美術館の切符売り場はけっこうな行列なのである。

「混みそうですね」
「申し訳ありません、いちばん混む時間なので」

 よく晴れた土曜の午後ならそれも当然である。

「なんとか15分で見終えようと思ってるんだけど、ちょっと無理かな」

 洒落の通じる男はいい。窓口から笑い声とチケットが出てくる。'74年の来日時、ポップアートの先駆者ウォーホルは「日本人に何か一言」と月並みなコメントを求められ、「ん?……貯金しろ」と言った人物でもある。寄席にチョイト出かける感覚でよいのだ。

 しかし「15分見終え作戦」は、冗談ではなく本気。絵画、写真、シルクスクリーン、スケッチ、3Dインスタレーション、彫刻など400点を総覧する国内史上最大の回顧展と謳われても、個人的な興味は300点を収めた私的アーカイブ「タイム・カプセル」に尽きる。

 ダンボールに保管された日本関連の品々は、'74年の初来日を機に集めたというから、もしかすると、'69年に創刊された『Andy Warhol's Interview』マガジンと提携していた時代の『STUDIO VOICE』があるのではないか──。

 それが主目的なら、15分間で地上53階の会場から引き揚げるのも可能というもの。《キャンベル・スープ缶》も《マリリン》も《ブリロ・ボックス》も《死と惨事》シリーズも《花》も《牛の壁紙》も《靴と脚》や《サンダル》、それに《エンパイア》も沿線の小駅のように半ば黙殺した。そして出逢えたのが《タイムカプセル》の部屋に展示されていた『STUDIO VOICE』1979年2月1日号。タイピングされた封筒の宛名は、860 Broadway 17th. Street.NY 10003のファクトリーだった。同じ号4冊がきれいなまま保存されていた。

『Andy Warhol's Interview』については、日本版にあたる『STUDIO VOICE』の編集長を30歳そこそこでしていた加減、アーカイブしておくべきことが沢山ある。あまり編集を加えないウォーホル流のロング・インタビューとハイ・レベルのモノクローム写真による誌面構成の方法が、連載をお願いしていた猪瀬直樹初期作品『日本凡人伝』のシリーズにつながっていると評しても、今の人には分かりづらい話だろう。

「将来、誰でも15分は世界的な有名人になれるだろう。」
("In the future, everyone will be world-famous for 15 minutes.")

 15分で見終えた展覧会のあと、しきりに思い出されたのが、ウォーホルによるこの名言。世界的有名人への道を歩んだ猪瀬さんは、この先どうなるのかなと下降するエレベーターのなかで思いを馳せた。

森美術館10周年記念展 「アンディ・ウォーホル展:永遠の15分」
本展は、700点におよぶ初期から晩年までのウォーホルの作品と資料を包括的に紹介する、日本では過去最大級の回顧展です。作家の主要シリーズを網羅した本展はウォーホルを知らない人には「入門編」となります。また、《人体図》をはじめ、日本初公開の作品も多数含まれる本展は、ウォーホル通が見ても新たな発見や驚きがあることでしょう。